終わりだよって誰かが言ったから。

住めば都という言葉、私にはない。最初にこれはダメだと思ったらそれが都に転じることは絶対にない。そのことは前回で懲りたはずなのに、またやるのかなと思いながら知らない街を歩き、縁もゆかりもない街を歩き、引越し先(候補)の建物を見上げ、似てんなと思った。あの、嫌で嫌で仕方なかった部屋のある街に似てんね。あれより悪いかもしんない。あのときはまだ知らない土地じゃなかった。駅までの道にお稲荷さまもいらした。それにひきかえ、ここはどこだ。いったいどこなんだ。


いま住んでいる部屋に越したとき嬉しかった。夢みたいと思った。朝も夜も歩いていて幸せだった。公園を抜けるとそこはパリの街中にある美術館の裏通りみたいで、ヘルシンキのちょっと高級な住宅地みたいで、私が通ってきたのはセントラルパーク? イギリス映画の世界みたいにもみえたし、目を閉じれば風の音が、子供のころ大好きだった小説みたいに話しかけてきた。どこへでも行けた。夜、日付が変わるころ、毎日踊るように帰宅した。でも日曜日の夕方、頭の中で「もう終わり」という声がした。比喩とかじゃない。ああ、そうなのかと思った。なら仕方ないじゃんね。


夢はさ、長く続かないものだから。昼間にまた来てみるよ。怖いんだろうたぶん。そろそろ稽古に行かないと、取り返しがつかないくらい遅刻だよ。
写真とかは、特にない。
20:30